6.身の丈を超えないで、身のほどで生きる

  1994年、ダイヤモンド社から「身のほど経営のすすめ」というタイトルで出版して頂いた。サブタイトルは「小さな会社が元気で生きる」とした。日本アイアール社を創立して「20 周年記念」の意味合いもあった。当社のことが少しでも宣伝できればという下心もあった。それから28 年、特許公報の電子化という大きな変化の波に飲み込まれ、これまでのビジネスモデルが一気に崩壊した。それでもどうにか、しぶとく生き抜いて来られた。感謝、感謝である。

  経営者には幾つかのタイプがあるという。ひとつは会社を大きく発展させ、社員をたくさん雇い、社会に役立つ商品をたくさん生産し、市場に出して感謝されることで、会社の存在感を高めていく経営者。もうひとつは、自分が持っている技(ワザ)や感性に拘りながら物つくりする職人技を大事にする経営者。このような経営者は、発明くんの憧れでありに尊敬している。しかし残念ながら発明くんには、この才能は持ち合わせていない。

  しかし、経営能力は無くても発明くんが戒めとしているのは、中国古典「菜根譚(著書:洪自誠)で述べられている「徳は事業の基(もとい)なり」である。徳を持った企業であれば、事業も永続的に上手く行くということを「菜根譚」は説いている。基(もとい)、基礎とは他人への礼儀や思いやりである。これだけは守りたい。

  高度経済成長期の前は、多くの国民が貧しかったから、志や夢が大きな支えとなった。しかし貧しくても惨めさはなかった。高度経済成長期は、利益の配分も上手くいき、そのお陰で国民の多くが豊かさを享受してきた。また、大きい会社が無条件に高く評価されていた。しかし、いまや頼れるべき大企業は倒産、合併、リストラ等で「大きい事は良いことだ」の神話が崩壊している。会社経営の効率化に伴い犠牲者も出している。

  日本アイアールは小さな会社であるが。生き抜いていかねばならない。会社の評価は会社が大きいとか小さいとかでなく、市場や取引先のニーズ(市場要求)に対応できる能力があるか否かで、評価されるべきだと考えている。有難いことに知財業界のお客様は、品質にはうるさいが、取引する相手(外注先)が大きいとか小さいとかは、あまり気にしていない。

  ただ、何か問題があった時は、相手(外注先)が、大きな会社であれば“仕方がない”と言い訳が聞くそうだ、冗談半分、本音半分としても妙に納得ができる、一般的に小さな会社は、信用されにくいようだ。しかし、仕事を引き受けたからには依頼者の信頼に応え、責任を果たすのが当然の義務である。それが当社の生き残れる道だと確信している。

  依頼者が外注化する際の関心事は、「費用対効果」の検証である。確かにコストと品質の兼ね合いは難しい。品質が優先である。それを実現するには依頼者とのコミュニケーションが欠かせない。いま流行りの「聞く力」「質問する力」である。つまり対面によって膨らんだ情報が品質を充実させるヒントにもなる。いま知財担当者の悩みは、現場の技術者と直接対面によるコミュニケーションが取れないことのようだ。これは、業者とのお付き合いにも当てはまる。

  可視化や数量化が難しい仕事は、デジタルとアナログの併用があってこそ業務の 「みえる化」が実現される。つまりデジタルを最大限に使いこなしアナログを吹き込みながら、目指すべき答えの試行錯誤をしながら「見える化」を実現させるのが「デジ・アナ人間」である。

  デジタル優先の世界であっても、アナログに拘る業社が知財業界に一社ぐらいあっても良いのではないか。日本アイアールは、小さな会社であっても知財業界に必要とされる「キラリ」と光る「デジ・アナ人間」を目指すが、今の時代「アホ」かいな、と笑われるかもネ・・・・・・・。

発明くんイラスト

  情報の解析は次の三つの要素から構成されています。ポイントはツールをうまく使いこなして人間の「知」を加えていくことです。

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