5、日本の強みは、中小企業が持つ「モノづくり」技術である

2024年2月16日朝日新聞(朝刊):『日本GDP4位に転落.円安響きドイツ下回る。バブルの崩壊から続く「失われた30年」の低成長が齎した結果である』と論説されていた。2面には、『転落 失われた30年の果て 日本の技術力 世界に遅れ』と大きな見出しがある。そして7面には 『ドイツ「稼ぐ力」で浮上 高付加価値を国内製造 輸出し高いシエア』とある。大きく紙面を取って解説されていた。整理すると、

①付加価値の高さで勝負、ニッチ市場で高い世界シエアを持つ、それを支えているのが非上場のドイツ企業である 

②ドイツ非上場企業の経営者は短期的な利益に左右されず長期的な視野 視点を持っている。 

③ドイツ国の中小企業は開発から海外販路の開拓まで、同国の研究機関や大学の支援に助けられており、中小企業の「モノづくり」を支えている。(新聞記事から引用)

凡そ20年前であろうか、独立行政法人宇宙航空開発機構(JAXA)の技術移転を進める特許コーディネータ-として一年間、参加させてもらったことがある。JAXAさんの技術は高度で、どのように取り組めば技術移転(転用)の可能性が生まれるのか自分には、その応用能力がなく、お役に立つことができなかった。

奇遇というか、後年になって篠原さんが個人的な興味(趣味?)で、宇宙関連の市場動向や技術動向の調査研究をしていた。いま、知財業界で最も注目されている「IPランドスケープ」であろう。情報収集は世界が対象である。検索言語は当然英語である。その調査レポートには、これまで聞いたことのない企業や個人が多く抽出され、技術の多様さ、深さ、独創性に驚いた。何故なら、宇宙開発といえば著名な大きな会社しか関わっていないと思い込んでいたからだ。

例えば、回転による動力の伝達を摩擦に置き換えて軽量化するといった技術などは、宇宙衛星などに組み込まれているのであろう。恐らくこれらの関心情報は、欧米や中国等の研究機関などで収集されており、絶えず追い続けているものと思う。それらの情報は英語であるから彼らにとっては支障なく情報収集はできる。英語を苦手とする日本は、このハンデイを克服せねば世界から取り残されて行くであろう。

この「篠原レポート」から知り得たことは、先ず新規事業の支援を求めるベンチャー企業や自社技術の活用を求める非上場(中小)企業にとって、情報発信の場となり貴重なツールとなっていることである。一方、ベンチャー企業が持つアイデアや技術を評価して投資をする。あるいは非上場・中小企業が持つ技術を評価して自社との提携メリットを検証するなど投資家や事業家とっては重要な情報源となっている。まさに「シーズ」と「ニーズ」の出会いの場になっていることだ。

スペインに移住している友人の話:『ラテン系であるイタリア、スペインでは、家族との生活、地域社会での人間味ある連携が最優先である。その生活を豊かにする「育てる」「つくる」の労働力と技術、そして情熱がある。ただしその小さな成果が大きなビジネスになるネタであっても、家族との生活を犠牲にしてまで金儲けをする気はない。金儲けはアングロさんにお願いして、ラテンさんは家族と地域の元気をつくるのが生きがいである』 と。ドイツ非上場企業の短期的な利益に左右されない「モノづくり」と共通する部分がありそうだ。

参考:
先にアップした資料、2024/08/09 歴史から学ぶ、「言語」と「文化」で、ラテン系、アングロサクソン系の人たちの、ものの考え方、価値観の違い等に触れています。

日本企業も短期的な利益を追うコスト削減だけでなく、自社技術を生かした付加価値のある商品、サービスへの長期投資する余裕が欲しい。地方自治体も「文化知財」を含めた「知的財産」の重要性を認識し、地元企業の情報発信等の支援を積極的に行い地域の活性化に知的財産を取り込んでいくことを願う。