9.「知的財産活用研究所」を設立

―当研究所の「研究コンセプト」は大きく 5 つある。―

  1. 「グローバル特許明細書」作りに繋がる発明提案書作成
  2. 世界へ「物、事、考え」を伝える「文明日本語」の啓蒙活動
  3. 筋の良い研究テーマを生み出す「知的基盤」の構築
  4. グローバル知財で活躍できる「知財人材」の育成
  5. 「中国知的財産」に関する研究活動

9-1.「グローバル特許明細書」作りに繋がる発明提案書作成

  1990 年から図解による創造技法の一つであるMC(マトリックスカード)法を知的財産分野での活用を目指した。MC法とは、表面が3行3列の9面のマトリックスカードを使用して、中心の 1 セルとその周辺を取り囲む8セルの「思考の場」で問題を解決する手法である。このMC法をソフト化したのが「メモダス」/「MEMODAS」で、「知的生産技術」を支援するツールと位置付けている。MEMODAS で、アイデアを出し、創造のプロセスを学び、論理力を鍛えることで、発想が豊かになる。この MEMODAS を発明提案書の作成ツールとして活用することの研究に取り組んできた。

(*)商標登録 第 4730802 号/ 特許第 3841327 号/ 特許第 4460532 号/ 発明者 長谷川 彦):【メモ】:MC 法は、「大泉 浩晃先生のマンダラ-ト(曼荼羅法)」、「創造技法 KJ 法(親和図法) 川喜多二郎先生」 「知的生産の技術(岩波新書)梅棹 忠夫先生」等の著作物から学んで作られた創造技法の一つである。


発明くんイラスト


9-2.世界へ「物、事、考え」を伝える「平明日本語運動」

  我々日本人は世界へ「物・事・考え」を伝えるための、平明な日本語で文章を書く、という意識が薄い。日本語の構造は極めて柔軟性があり、日本文化に根差した高度な言語、すなわち「文化日本語」が根付いている。しかし普遍的な事項を誤解なく伝える言語には向いていない。技術の説明は、文明の言語である。即ち「文明日本語」で書かれた文章であれば、社内の文書品質の保証管理体制が構築できる。特許明細書の品質を高めるに手っ取り早い解決策である。文明言語は普遍性があり、特許翻訳ソフトの支援が受けやすくなる。

9-3.筋の良い研究テーマを生み出す「知的基盤」を構築

  「魅力ある研究テーマがない」「筋の悪いテーマばかりが集まる」など業種を問わず、研究開発部門での共通の悩みとなっている。こうした状況の中で、企業の製品開発、研究開発を「どのようにすればもっと成果のあがるものに出来るか」を技術情報、とくに特許情報を活用することで、その方向性を見いだすことが目的である。

  研究開発は「課題解決型」だけでなく「課題探索型」も取り入れて行くという方向に転換している。日本企業の研究開発体制の問題点を提起しながら、会社から失われていく「記憶力・創造力」を次世代へ、いかに伝承させるべきか、具体的なツール(*)を開発して、その効果を検証した。

(*)このソフトの名称は、「MEMOLOG-Ace (メモログエース)」とした。

9-4.グローバル知財で加着が出来る知財人材の育成

  知的財産は会社の利益を生み出す財産である。国際社会では知的財産が極めて重要な役割を果たすことは間違いない。また常に知財訴訟の可能性を念頭におき、知財係争で会社を潰さないための(特に欧・米国、 中国)知財戦略と出願戦略が要求される。 これまでは、権利を取る、権利を守ることに重点が置かれ、そのための「知財人材」を育成してきたと思う。これからは創造力豊かな人材育成が必要である。さらに物事を論理的に考え、世界へ伝わる文書を作り上げることができる人材の育成も重要となる。 当研究所は、このような課題を研究テーマに選び、研究成果のレポート発行、セミナーの開催をもって、お客様との情報交換を目的に発足させた。我々の研究に対する評価は恐らく 5 年、10 年の歳月が必要となろう。(設立憲章から引用)