4.知財部門の働き方が変わる、仕事が変わる

「物、事、考え」を伝える、やさしい日本語がツールとなる

  最近の話題は「働き方改革」である。テレワークは、これまで築きあげてきた社会の複雑な柵をスッキリさせ、高度経済成長時代の成功体験から脱皮できない企業風土を変えるキッカケになると思う。「働き方改革」で知財部門の仕事のやり方、進め方がどのように変わるのか。

  知財部門は、『知財業務に関わる全ての管理と運営責任を負う』。『会社の経営方針に沿 った「知財戦略」を策定し、経営陣、事業責任者、開発責任者の決済を得て「知財戦略」を推進する』。『関係者への「知財教育」を切れ目なく実行し、会社経営に取り入れた知財経営の重要性を認識させる』とある。

  厄介なことに知財業務の領域は広い。内外国への出願、内外国の特許調査、技術 者への知財支援、外部との交渉と契約、外国語への翻訳、知的財産の管理、そして係争の対応と処理といった具合に多種多様である。

  知財部門は、テレワークの導入が比較的しやすい部門と見られているようだ。しかしテレワークだけでは完結出来ない仕事が沢山ある。例えば、研究開発技術者との発明相談、出願代理人とのやり取り、取引先との諸契約などは、何れも対人との対話が重要な要素となる。知財部門の仕事は、「調整型のサービス業」とも言える。「知財経営」の重要性が増すにつれて、人間だけしか出来ない「思考」、「判断」、「評価」といった仕事が、益々重要となる。

  テレワークでの主な仕事は、各種報告書の作成、テレビ会議での情報共有など多岐に及ぶ。だが、上司や同僚とのやり取りがスムーズに進まず、お互いの意思の疎通が難しくてストレスが溜まるという問題も抱えている。つまり上司や同僚と直接、顔を合わせないコミュニケーションの取り方が問われている。

  この問題を解決するには、こちらの考えを相手に誤解無く伝える表現力、明確に分かり易く書く文書力、論理的に物事を展開できる論理力が求められる。それには、「物・事・考え」を伝える為の普遍的な日本語表現、つまり、「やさしい日本語」を意識すれば解決の道は開ける筈だ。

  ソフトを作るのに「プログラム言語」があるように、テレワークを円滑に動かすには 分かりやすい言語(TWOSL(*))が必要である。それは誤解がなく相手へ、自分の考えを正確に伝えるための「やさしい日本語」である。自分の考えを相手に誤解なく正確に伝える時に、「やさしい日本語」を強く意識することで、コミュニュケーションが上手くとれるようになる

(*)発明くんが「テレワークオペレーションシステムランゲージ」を勝手に省略しただけである。

  正確であるということは、誰が、どこで、いつ、なにを、どのように、なぜ、どうしたと いう 5W1Hの要素を明確に述べることにある。明確であるということは、聞く人、読む人の頭の中に、なるほどそうか!と抵抗なく 収まることを意味する。なるほど!と思わせるには、伝えたい内容が論理的(ロジカル) に展開されていると理解が得られやすい。簡潔であるということは、人の頭の中に無理なく、スイスイと入っていく分量(短く) で話す、あるいわ書くことである。

発明くんイラスト

【関連資料】:https://www.ipma-japan.org/pdf/20201002-01.pdf

◆理科系の作文技術(木下是雄著)に日本語の特長が述べられている

  “日本人は、はっきりしすぎた言い方、断定的な言い方を避けようとする傾向が非常に強い。 たぶん、ほかにも可能性があることを無視して自分の意見を読者に押し付けるのは図々しい という遠慮深い考え方のためだろう。実務の障害の一例は会議の席での曖昧発言(裁量の 余地を残しておくとか)である。すくなくとも会議の席では自分の考えを明確に主張する習慣を確立すること”