4.世界で通用する、戦える強い特許明細書を作る

―グローバル化で、知財業界は大きく変わった。―

  変わったきっかけは、「知的財産のグロ-バル化」である。しかし未だに「グローバル知財」には、ほど遠いのが日本の現状である。例えば「世界で通用する、戦える特許明細書」を作るべきと声を上げても誰もが改善する気はない。もっと酷いのは、転換期にあるにかかわらず、その必要性すら気付いていないという、お粗末な状況が今日まで続いているのが残念である。

  余談になるが、2015年に「このままで良いのか、日本特許明細書」を一般社団法人発明協会から出版して頂いた。しかし評判は散々で、発明協会さんには迷惑をお掛けしたようだ。アマゾンでの読者評価は、いずれも両極端で 1 と 5 しか無く、2、3、4、は無かった。友人から1 と 5 を足して投稿者数で割れば「3」そこそこで、お前さんの身上である“ほどほど”で丁度良かろうと妙な慰めを受けたことがある。評価1を下した読者は「では、どうすれば良いのか具体的な答えを教えろ」と言うことである。具体的な解決策は、夫々の会社で違う。「自分のアタマで考えたらどうですか」と反論したいが、やめておこう。

  発明くんが言いたいことは、発明技術は文明の言語で説明されている。それは世界共通である。日本特許明細書は、曖昧で分かり難い文章があり翻訳が難しい。つまるところ「IP(知財)戦争とは、つまるところ言語の戦いである。しかし、このままでは戦えない。

  世界で使われる言語は、英語である。日本にとってこれほど不利な条件で戦わなければならない例は、歴史上一度もなかった。製品の品質や価格で勝負するのとは違う舞台で戦わなければならないのである。

4-1.世界で通用する強い特許明細書の作成は、「発明提案書」の質で決まる

  発明提案書の作成は、技術者の発明能力を高め、技術者にとって自己主張、自己表現の場でもある。強い権利を取得するには、発明を多面的に把握し、あらゆる類似技術を想定する必要がある。

  発明提案書に書き込まれている基本情報は、

  ①従来技術では解決されなかった課題は何か、
  ②その課題をどのような手段で解決したか、
  ③その解決原理(作用)は何か、
  ④その結果、どのような効果が得られたか、

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【関連資料】:発明提案書の作成に「創造技法」を活用する方法もある。


4-2.技術の説明は、「文明言語」で行う:篠原レポートから引用

  「日本特許出願明細書」は、元々が国内で特許を取るだけを目的として作成され、多くの人に読んで理解してもらう意図が無く、特許を専門とする身内(知財村)だけで通用すれば良いと考えられているのではなかろうか、例えばこのような文章が散見する。

  1) 主語が存在しない文章。
  2) 誰が(WHO)、いつ(WHEN)、どこで(WHERE)、何を(WHAT)、なぜ(WHY)、 どのように(HOW)行う、という、5W1Hの要素の必要な記述が欠けている文章。
  3) 構成要素の互いの関係状態が把握することが出来ない文章。
  4) AからBへの動作・機能が掴めない文章。
  5) 主体(主語)の属性を定義しているのか、主体と他要素の関係状態を述べているのか、主体から他要素に動作しているのか、記述の目的が曖昧な文章がある。

  このような日本語文章は翻訳が難しく海外では通用しない。最近は翻訳ソフト(AI)の支援が受けられる環境が整っている。但し「文明日本語言」で、書かれた特許明細書あれば、という条件が付く。数ある文書の中でも特許明細書(特許仕様書)は、発明技術の説明書であるから翻訳ソフトの支援が受け入れやすい分野である。

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【関連資料】:英文特許文書を読みこなす為の WEB 講座(無料)は、こちらから

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