5.技術者への知財教育のやり方を変える

―「知財経営」を根付かせる早道であるー

  社員教育の目的は大きく二つある、と言われている。一つは、やる気のある人への支援。 二つ目はやる気は無いが、とりあえず平等に機会を与えるというアリ バイ作りである。いずれにしても「知財教育」の難しさは、知財に関心がある人、そうでない人の温度差が大きいことである。しかし、技術者にとって「知財力」がある、なしで、技術者としての人生が変わるほど重要な要素であることを伝えるべきだと思う。会社も技術者達の「知財力」を底上げしていかねば会社は、いずれ衰退していくことになる。技術者のための「知財教育」が益々重要となっていく。

  技術者達への「知財教育」で、説得力があるのは、”知財は知財部門のために在るのではなく、技術者のためにあるのです!”と訴える事である。「知財力」を高めることは、すべて自分のためである。「知財力」を武器にして自分価値を上げる。自分の為になる話であれば目を輝かせて聞き入る筈だ。「特許とは、自然法則を利用して云々・・・」このような説明は、とりあえずは必要ない。

  必要なのは、”知財力を身につけて、スター技術者になろう!”という、切り口である。スター技術者の共通点は「技術力」だけでなく「人間力」そして「知財力」の3点が揃っているという事実を伝えることである。更にスター技術者には、優秀な技術者達を引き寄せる磁力があり、応援する人たちが回りに集まる。若手技術者達の憧れとなり、目標とされる。会社からも期待される。他社からも注目される。といった利点も強調すれば、納得できる。

  技術者の能力を量るには、当人の特許明細書を読めばわかるそうだ。「知財力」の高いスタ ー技術者は、自ら課題を見つけ、その課題を解決する能力が高い。つまり、アイデアを発明に、発明を特許にするプロセスを身に付けているから発明能力が高く、強い特許が作れている。

  知財部門が研修する技術者向けの「知財教育」は、将来の「スター技術者」を発掘する場と捉えておけば余計な力みは無くなる。スター技術者が2人、5人、10人・・と増えて行けばR&D 部門全体の底上げにつながる。更に大事なのは知財部門が彼らを知財面から全面的に支援(えこひいき)することである、彼らが「スター技術者」として輝けば、様々な部門の人達からも支援が受けられる。そして「スター技術者」が、「自分価値」を上げる大きな武器が「知財力」であることを再認識できれば、その知財教育は、大成功である。

発明くんイラスト