6.研究開発部門の「知的基盤」構築を急ぐ

  「魅力ある研究テーマがない」「筋の悪いテーマばかりが集まる」など業種を問わず、研究開発部門での共通の悩みとなっている。こうした状況の中で、企業の製品開発、研究開発が “どのようにすればもっと成果のあがるものに出来るか”。答え(課題)が見えない時代こそ、必要情報を「構造化・再構造化」して質の高い情報を持つことが重要である。そして、それらの情報を共有することができれば、「個人・組織」の創造力は格段にアップする。

  研究開発は「課題解決型」だけでなく「課題探索型」の重要度が高まっている。知恵のある経営者は経費削減とリストラに頼らず、うまい「ネタ」が次々と生まれる知的基盤(プラットホ ーム)を構築する。知的基盤とは、ベテランの知恵を活用して継承できる環境の作りである。若者が、それらの情報を共有し、持てる力をフルに発揮する基礎・基盤のことである。開発メンバーの創造力を共有すれば筋の良い研究テーマの「ネタ」がどんどん生まれる。儲かれば、人減らしの必要はない。

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  創造活動とは、情報の「構造化・再構造化」の繰り返しである。このプロセスは日常的に絶えず繰り返されている。つまり創造活動とは、構造化された情報を記憶させる行為である。そしてその構造化された情報を記憶から呼び戻し、更にそれを再構造化することの繰り返しである。技術者達の創造力が共有できれば、儲かるネタがどんどん生まれてくるはずだ。

  これからは、「実験研究」をする前に開発コンセプトが良くなるまで「調査研究」を続ける社内文化が必要である。調査研究のプロセスをメンバーが共有、強化することでメンバーの創造力が豊になり会社から消えて行く記憶力が、伝承される。 要するに、「知的基盤(インフラ)の構築」とは、社内にある知的資産を文書でもって顕在化させ、その情報をプロジエックトチームで共有し、伝承させていく「情報マネジメントシステム」のことと定義する。これらの情報を「構造化」「再構造化」していくことで、その「知的基盤」その会社、研究開発部門特有の人工頭脳(AI)として進化をしていく。

―筋の良い研究テーマの発掘法:(故)久里谷レポートから引用ー

  社内外の技術情報は、共有されている 「米国 S 社研究所」に存在する社内外の技術に関するデータベースもさすがだ。当時、日本ではパソコンの重要性がようやく認識されはじめ、 T 社でもアップルのパソコンが私のいた職場にようやく1台導入されて、少しずつ簡単な表計算などに使われ始めたころだった。「米国 S 社」では、既に行く先々でやたらとパソコンが目についた。そして既に、パソコンをホストコンピューターにつないで、社内情報網ができあがりつつあったのには驚いた。 カルチャーショックといった方がよかったと思う。 情報が共有されている。助けてくれる専門家がいる。時間を有効に使える。だから一つずつのプロジェクトの人数が少なくても、十分効率的にやっていける。一つずつのテーマの 研究コストが安くてすむ。だから一つずつの製品のマーケットがそんなに大きくなくても研究開発費がペイする。だから沢山の研究テーマを取り上げる事ができて沢山の新製品が次々と出てくるわけだ

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