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この資料は米国特許弁護士 ジム・ロング・エーカ氏が日本向けに作成した教材、
「BASICU.S.PTENT WRITEING AND FILING COURSE MTERIAL」、
8時間コースからの抜粋です。

★ (著作権について):この原稿の無断印刷、ダウンロード、転用はできません

クレームとは、出願された特許の発明の、明解にして正確な言語(in clear exact language)を使っての記述(description)のことです。クレームは、明瞭に特定されかつあいまい性のない(unambiguous)言語で書かれていなければならず、このことは法律で要求されています(the requirement of the law)。

単一文章形式(single sentence form)

◆ クレームとは、発明の、正確にして特定的な法的記述(exact and specific legal description)であり、特定の形式にのっとって書かれており、そしてその形式とは単一文章ということです。それはパラグラフで構成された形式ではなく、単一文章形式(single sentence form)です。その単一文章は、独特の句読点方式によって段落に分割され、最後は「ピリオド(.)で終わります。クレームは極めて独特な文の書き方(particular type of writing)だということを覚えておいて下さい。

◆ クレームは、ただ構成要素を羅列したリストではありません。特定的な相互関係を伴った(with specific interconnection)構成要素のリスト(a list of parts)です。つまり、クレームとは、適切に相互関連を持ち、かつ動作可能(operable)な構成要素のリストです。

◆ 特許法令の中でクレームの文書作成に関連のあるのは、米国特許法第112条(35U.S.C.§112)だけです。クレームは「全体明細書」の一部分で、全体明細書の最後に記載されるということです。これは重要なことです。というのはクレームの記載内容が、「明細書(specification *クレーム以外の記述部分を指す)」には書かれていないことがあるからです。

明細書とクレームの両方から支持された発明

◆ 特許明細書は「クレームと明細書」とで成り立っているので、出願の提出時には、主題をクレームにのみ含め、その後、明細書にも含めるということができます。こうすることによって、明細書とクレームの両方で、完全な、かつ支持された発明(complete and supported invention)をもつことになります。

◆ 先程の米国特許法第112条の2番目のパラグラフが述べているのは:「全体明細書は、クレームで終わらなければならず、そのクレームは発明を、個別的に詳細に指摘しかつ明確に請求していなければならない」。

発明の特定的、法的特長付け

◆ 使われる言葉:その分野での通常の意味で:
(1)クレームで使う言葉(the words the claim uses)は、その発明の分野における語彙(語集lexicon)の中で通常の意味(ordinary meaning)を持ったものであること。つまり、その技術分野における通常レベルの熟練者(当業者)(one of ordinary skill in the art)にとって通常の意味であること、その分野の専門家にしかわからない意味を含めていてはいけない、ということです。

◆ 明細書とクレームの一致:
(2)クレームは明細書からその意味を引き出していること。つまり、クレームで使われる言葉は、明細書で使われている言葉と、同じ意味を持っていると見なされるものでなければならないこと。それによって、全体明細書の中のクレームは、一貫性があると見なされる(are considered to be consistent)ことになります。そして、それらの意味のすべては、専門家ではなく当業者(その技術分野における通常の熟練者)が理解できるものでなければなりません。

クレームの形式種(claim types)

米国特許法第112条は、更に次のように続きます。「クレームは、独立形式または従属形式、あるいは多数項従属形式で記述されることになる。」

◆ 独立クレーム(independent claim)
独立クレーム(independent claim)とは、他のクレームを引用する(refer)ことのないクレームを指します。自分だけで完結しているクレームです。

◆ 装置のクレームと方法のクレーム
○と△の処置を達成するための「装置に関するクレーム(claims to an apparatus)」と○を処理する「方法に関するクレーム(claims to a method)」があります。

◆ 従属クレーム(dependent claim)
独立クレームに直接関係し、また長いクレームを短縮化する(in a shorter manner)ために作られたクレームが従属クレームです。従属クレームとは、他のクレームを引用しての存在です。従属クレームは、長くなりがちなクレームを短縮して書くための方法(a short hand way of writing)です。

◆ 多数項従属クレーム(multiple dependent claim)
クレームの種類には、もう一つ、多数項従属クレーム(multiple dependent claim)と呼ばれるクレームがあります。名前からも分かるように、多数項従属クレームは、2項以上のクレームを引用する、および2項以上のクレームを択一的に引用するクレームです。多数項従属クレームの実例を挙げると次のようになります。クレーム3は、「クレーム1あるいは2であるところの」と述べられます。既に説明したように、多数項従属クレームを用いることにより、長くなりがちなクレームを短縮できますし、先行するクレームを択一的に引用するという利点もあります。

◆ 手段プラス機能(means-plus-function)
米国特許法第112条の、一番最後のパラグラフは第6パラグラフです。ここでは、「手段プラス機能(means plus function)」と呼ばれている米国式クレームの書き方(U.S.style of claim writing)の説明があります。手段プラス機能クレームとは、ある物がどう機能するかということによって特徴づけられた、構造上の限定(a structural limitation)です。「手段(means)という言葉は、その手段がどう機能(作用)するのかという特徴づけがその後に続けられる形で使用されます。これは米国で認められている、独特なクレームの書き方(a unique form of writing a claim)です。手段とは、構造を指します。それは明細書すなわち構造の中にあり、それは明細書の中にあるものと等価(equivalent)であることを指しています。

等価、均等(equivalence)

◆ 米国審査手続きを勉強する過程で、「第112条、第6パラグラフに記載されている均等物(等価物、equivalence)と言うことを聞くでしょう。また、「均等の原則(doctrine of equivalence)」、に関する論議を聞くことも有るでしょう。これらは互いに関連性のない異なる事項です。

◆ 第112条、第6パラグラフの均等物(equivalence)とは、単に明細書に記載されたものに対応する等価物です。これに対し、均等の原則(doctrine of equivalence)とは、クレームの権利範囲を理解するために法的に利用されているメカニズム(a judicially used mechanism)です。発明がどのように機能して(work)、どのような結果(result)を生み、その結果はどういう方式(way)によって達成されたのかを、判断するために使われます。ですから、同じ「均等(equivalence)」という用語が用いられていても、均等の原則と第112条、第6パラグラフの均等物とは全く違う意味で使われています。

特許法施行規則(37C.F.R.1.75)

米国特許法以外に、クレームを学ぶところとしては、米国特許法施行規則の1.75(37CFR.§1.75)があります。クレームは明瞭な表現で書かれていなければならないことや、従属クレームと多数項従属クレームが認められていることなど、その内容はとても似ています。

◆ 明瞭かつ明確(clear and distinct)
これに対する手掛かりは、米国特許法施行規則の1.75のセクションDにあります。

◆ 明瞭な支持、先行する根拠(clear support or antecedent basis)
「クレームに用いられる術語および語句は(the terms and phrases used in the claims)、明細書の記述の中に、明瞭な支持または先行する根拠を、見出すものでなければならない。」

言葉の統一性、不明瞭は無効につながる、一貫性が求められる、クレームの中で発明は一つだけ

◆ 装置も方法も同じ発明を指す
特許出願に装置クレーム(apparatus claim)と方法クレーム(method claim)がある場合、これらのクレームは両方とも同一の発明を指したものでなければなりません。つまり、装置クレームは物(article)を指し、方法クレームはその物の使用方法(a method of using that article)でなければならないということです。しかし、方法と装置が別々の発明に分かれるという例もあります。これはなぜかというと、その方法は装置がなくてもよかったり、その装置が別の方法で使用されることもあるからです。

◆ 何を指す(What is this claim directed to?)
一般的に、クレームは明細書の主題を指しています。しかし、時には明細書には1件以上の発明が含まれている場合があります。

◆ 方法クレーム(method claim)
方法クレームとは、結果や目的を達成する工程(ステップ、段階a series of steps)を説明したものです。方法クレームの目的(objective)は「前提部分(preamble)」に説明され、それに続いて工程が段階ごとに説明されます。その工程通りに進めば、結果として目的を達成できるようになっているわけです。

◆ 広いクレーム(broad claim)、狭いクレーム(narrow claim)
広いクレームとは、発明を特徴づける、最低限の「物」、「工程」、「特徴」を表わしたクレームを指します。つまり、広いクレームとは、適切に相互関係を持った部分や部品の最小限のセットであり、そのセットが発明を形づくっている、ということです。

◆ 包括クレーム(inclusive claim、generic claim)
包括クレームとは、出願人が含めたいと考える発明の色々な変形版(variations)を全て含めたクレームです。

◆ 範囲内(within the scope)
範囲内とは、主題が、「法的な特徴づけ(legal characterization)の範囲内であるかどうか」を確認するためのもので、とくに先行技術に関する判断を下す場合にしばしば用いられます。

◆ 新語作り出し
特許では、このように、明細書に適切な定義さえあれば、頭文字をとって新しい新語を作ったり、新しい言葉を創り出したりすることができます。

◆ 明確な記述:その他
先程も説明したように、「明瞭かつ明確な言語」とは、明細書の中で使われた言葉と同じということです。あるいは、明細書の中で使われたものと、言葉として同じ意味を持っているということを指します。

◆ 肯定的記述(positively set forth)
更に、クレームの文書では発明の特徴を、肯定的に記述(positively set forth)しなければなりません。この「肯定的」な記述は、先程の「明瞭で明確」な表現とは、ニュアンスが違います。「明瞭で明確」な表現は、明細書に記載された特徴やその等価物を説明する際に要求される表現です。これに対し、「肯定な記述」とは、クレーム中の特徴の記述には、肯定文で表現することを意味します。

◆ 手段プラス機能 means plus function
米国においては、手段プラス機能の表現は明瞭な記載であるとされており、この書き方は、米国特許のほとんどのクレームに用いられているといってもいいぐらいです。

◆ 全てを記述する
クレームは、発明の主題を完全に記述したもの(a complete description)でなければならず、特許を請求している発明が機能するために必要な構成要素の全てが、含まれていなければなりません。同様に、装置も作動可能(operative)でなければなりません。そうなのです。クレームに書かれている装置は「働き」があるものでなければなりません。良い例としては、ハサミ(鋏)があります。
(*) 鋏みで説明:「紙を切るためのハサミは、お互いに接続した2枚の刃で構成されている」、という表現は、クレームの文書としては不十分です。「第1の刃が第2の刃に接続されている」という書き方では、2枚の刃が固定されていてもよいことになってしまうからです。ハサミとして機能するためには、2枚の刃は片方の刃を軸にして他方の刃がピボット式に動くように接続されていなければなりません。これで初めてハサミとして機能することになります。

◆ 適切な文法(proper grammar)
最後に、クレームの文書作成に関して注意しなければならないのは、適切な文法を使って文を書くということです。つまり、クレームは句読点を正しく使って、良い英語の文章で書かれていなければなりません。クレームの一番最初の部分は前提部分(preamble)で、その後に続く部分は主要部(body)と呼ばれています。

資料):このままでよいのか日本の特許明細書から引用

請求項とは、「発明を特徴つける、最小限の物、工程、特徴を記述したもので、適切に相互関連を持った部分(部品)の最小限のセットである」。すなわち、そのセットが発明を形づくっているものと、定義されている。従って「広い」という表現より「強固」といったほうが適切といえる。上位概念の技術用語を使えば広くなるという単純なものではない。明細書の中で発明を丁寧に説明して、ご理解をいただいたうえで「私はこのように発明の権利を請求いたします」というのが決まりであると思う

「米国特許明細書」の請求項は、確かにピリオド一つの一文で書かれているが、日本語と英語では言語としての条件が異なる。英語(英語だけでなく欧州語も)は、記述の切れ目を付けるのに、コンマ(、)、セミコロン(;)、コロン(:)、ピリオド(.)と四段階を利用できる。これで区分けできるから、ピリオド一つの文章形式になっていても、さほど苦労なしに読むことができる。

しかも、この区切りの道具だけでなく、動詞の分詞形、文法でいう過去分詞とかINGの現在分詞、さらには不定詞も利用できるから、本動詞、すなわち文章の核である動詞の原型がなくとも意味を伝えることができる。さらにいえば、関係代名詞や関係副詞(wherein つまりin which )という便利な道具も揃っているから、いくらでも言葉をつないで行くことができる。一つの文章で書くのが苦にならない。少し勉強すれば誰でも請求項の形式にのっとって書けるようになる。

日本語は、こうはいかない。単語と文節をつないでいく接着道具には「テニオハ」しかないのだから、通常の文章においても少し長くなると、なにを言わんとしているのかわからなくなる。このような言語を操って、あれも請求したい、これも請求しておきたい、と一つの請求項の中に、てんこ盛りに構成要素や機能や方法を入れ込んでは誰も理解できないのは当然である。

1).米国特許明細書を読むことで文書の論理構成(展開法)が身につきます。

2).米国特許明細書の英文は極めて構造的で読みやすく理解し易いことが分かります。

3).中でもクレームは厳密に規定され構造化されていますのでクレームの図式化ができます。

4).クレームの図式化ができる人であれば、クレームを先に造って明細書へ反映させながら特許明細書つくりをすることもできるでしょう。クレームと明細書の矛盾が防げます。

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