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IPMA >> このままでよいのか日本の「特許明細書」の書籍案内(2013/12修正版)

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このままでよいのか
日本の「特許明細書」

技術の優位性が守れない企業は
グローバル社会で生き残れない

編集:知的財産活用研究所 編集著者:矢間伸次(一般社団法人IPMA代表理事)

特許明細書 表紙

 日本特許明細書の現状を知り、それが及ぼす影響を特許業界へ提起しました。本書籍は「特許明細書作成」の専門書ではありませんので具体的な改善策まで言及していません。

 表題とおり、このままでよいのか日本の「特許明細書」という問いかけです。グローバル社会の中で“日本の特許明細書は世界で通用するのであろうか”という素朴な疑問が著者の原点となっています。


出版元:一般社団法人発明推進協会
価格:2,100円(税込)

https://www.hanketsu.jiii.or.jp/store/top_f.jsp

―分かりにくい難解な特許明細書について、著者の考えですー

 この書籍に対する読者の意見は大きく3つありました。

1. このままで良いとは思わないが、周りがやっているから、これまでやってきたから、自分(自社)だけが改善することにリスクがありそうで難しい。

2. 素人に分かるほど「特許の世界」は簡単でない。発明技術の全てを文章で説明するには限界があり、その苦労を知らない人が、あれこれと口出しをするのはいかがなものかと思う。

3. 昔の特許明細書が酷かったことは否定はしない。しかし今ではずいぶんと改善されている。この書籍の提起は時代遅れだと思う。

 著者の提起は所属する産業や企業の事業形態によって受け取り方が違うのは当然です。いずれもご尤もな意見と思います。

◆ 著者は多くの特許明細書が、なぜ難解なのかという素朴な疑問を持っています。著者が考えるには特許申請側と特許審査官のやりとりにおいて特許申請側の“特許を取りたい”という強い願望からくる「こじつけ」と曖昧が諸悪の根源です。特許審査官は提出された「特許出願明細書」の文章だけで発明技術を理解し、特許要件が満たされているか否かの判断をするだけの人です。特許申請側と特許審査官の文章でのやり取りが、まるでゲームのようになったのではなかろうかと考えています。

◆ 申請者側は、少しでも広い特許権利が欲しいと頑張ります。審査官は特許要件を満たさないものに特許権利を与えるわけにはいきません。どうしても特許権利が欲しいということであれば、特許審査官は妥協案を出します。それは「特許権利範囲」の減縮です。お金と時間をかけて弱い特許権利を取得したところで本当に役に立つのであろうかという素朴な疑問を持っています。

◆ しかも特許申請側と特許審査官とのやり取りに使われる文章は解釈範囲の広い(以心伝心を期待した)曖昧な日本語です。この日本語を使って、お互いの妥協点を探りながら「こじつけ」した文章が「日本特許村」独特の言語を生みだし、さらに進化を遂げてきました。その結果「日本特許明細書」が「ガラパコス化」したと考えています。

◆ この「こじつけ」が他言語ヘの翻訳が困難な文章を生み出し“世界で通用しない(戦えない)特許明細書”となってしまったということではないでしょうか。日本の強みであった、この「こじつけ」の技は、特許明細書のグローバル化で足かせとなったということです。つまり海外へ出願する「特許出願明細書」の翻訳を通じて露見したという筋書きになります。特許申請側と特許審査官との文章のやり取りがもう少し論理的(ロジカル)になっていれば状況は変わったかもしれません。

◆ 分かりにくい難解な特許明細書に対して“おかしい”と思っている人は多いと思います。中でも特許明細書を読む必要性に迫られているのは現場の研究開発技術者たちです。彼等が「スイスイ」と読める特許明細書へ改善すべきと著者は考えます。「こじつけ」の技で取得した特許が及ぼす悪影響は多方面に及んでいます。その経済的損失はとてつもなく大きく、国益にも反することにもなります。

◆ 「研究・開発」の現場では“こんな曖昧な技術、あるいは当たり前(公知)の技術が、あるいは未完成の技術が特許権利として与えられているならば”商品開発はできない、あるいは商品開発のスピードが遅れる!”ということになります。どんな技術であっても特許権利を取得にするのが、特許申請側の腕の見せどころという説もあるようです。しかし著者は、この考えに賛成はできません。つまり特許法の理念である“産業発展の貢献が、むしろ産業発展の妨げにもなる”という部分が出るという考えです。

◆ 最近の特許明細書は改善されている、というご意見に対してベテラン中国の人弁理士と翻訳者に聞いてみました。彼等の言い分は“柔軟な日本語は外国人が理解するのに難しいです。しかし自分たちが習ってきた日本語は一定のルールがありました。ところが最近の日本語は日本語として成立していない、ただ日本文字を羅列したとしか思えない特許文章が見受けられます。これはとても悩ましい問題です。せめて海外へ特許出願する特許案件は、他言語への翻訳ができる日本語へ改善されるべき”という意見をもらっています。

◆ 分り難い難解な特許明細書の存在は日本だけでなく中国にもあります。中国は国土が広く多民族の集まりです。コミュニケーションをとるための言語として北京語が使われます。この北京語は米国の英語(米語)と同じ役目でコミュニケーションをとるための言語です。外国へ特許出願するための原本となる「中国特許明細書」は英語が得意で技術文書の作成訓練を受けた技術者や弁理士が北京語で「中国特許明細書」を作成します。この北京語は英語との相性がよく「中国語⇔英語」の機械翻訳ソフトの支援が得られます。つまり中国から外国へ特許出願される「中国特許明細書」は中国人技術者にとって容易に理解ができる文章になっています。中国語が読めない外国人は機械翻訳ソフトを使って翻訳すれば理解することができます。

◆ 問題は自国だけに出願されている特許明細書や実用新案明細書です。これらは自分たちが日ごろから使っている言語で自由勝手に書かれているといっても過言ではありません。つまり優秀な中国人技術者が読んでも理解が難い特許明細書や実用新案明細書がたくさん存在します。このように分かりにくい特許明細書は日本だけでなくどこの国にもあります。しかし「日本特許明細書」は海外へ特許出願する案件であっても自由勝手に書かれています。「もの、事、考え」を誤解なく明快に伝える言語、あるいは他言語へ翻訳ができる文章にはなっていません。

◆ しかも「日本特許明細書」の文書構成は論理的に展開されていないため非常に読みにくいです。技術内容を説明する文章部分も構造化されておらず「係り受け」が明快ではありません。翻訳者は理解を誤り誤訳する危険が十分にあります。「日本特許明細書」から忠実に翻訳した「外国特許明細書」の多くは、惨憺たる状態にあり海外の関係者から理解を得るのは難しいと著者は考えています。

◆ 日本から出願された「外国特許明細書」は外国人には理解が難しく、むしろその曖昧さが海外では武器となる、と言う説もあるようです。たしかに理解が難しい日本語がバリアになったということは過去にあったかもしれません。しかし特許がグローバル化した現在では、理解が得られない文書は単なる「紙くず」になります。では世界へ「物、事、考え」を明快に伝える説明力、文章力を身につける方法はあるのでしょうか。その方法はあります。「伝わる日本語、訳せる日本語」を強く意識して文章を書くことです。

◆ 外国へ出願する「外国特許明細書」の書き方の手本、は真っ当な米国企業(IBM社とか)が作成した「米国特許明細書」を真似る(リバースする)のが手取り早い、と著者は考えています。

◆ 先にも述べましたが米国は国が広く多民族の集まりです。お互いがコミュニケーションをとるための言語として発達してきたのが英語(米語)です。日本人からみれば味気も素っ気も無い単純明快な言語ですが技術の説明には適しています。技術はまさに文明です。技術の説明には文才は必要ありません。あるがままの事象を明快に書くだけです。つまり「文明言語」で書けばすむことです。できるだけ文化の色合いを消した日本語、これが「文明日本語」です。

◆ 数ある文書の中でも「米国特許明細書」は極めて構造的な文章で書かれています。これを教材にして英文構造を習得するのは容易と考えます。日本人に不足しているのは論理的に物事を考える論理思考です。論理的に物事を考える習慣が身についていないために英語が苦手にもなっているだけです。日本人技術者の言語処理の能力は高いですから英文の文章構造さえ慣れればなんてことはないでしょう。伝わる日本語、訳せる日本語を書き、機械翻訳ソフトの能力を利用して英語文章に慣れていくのが手っ取り早いと思います。(矢間伸次2013年12月25日)

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