IPMA >> 知的財産をマネジメントできる会社こそグローバル社会で生き抜く資格があります >> ミッション4
1)「知財経営」の推進戦略を策定するには、まず知的財産の文書化がスタートです。中でも特許明細書(権利書)の品質が特に重要となります。特許明細書の品質は発明技術の質、技術分野、書き手(作者)によってバラツキがあることは理解しています。しかし多くの特許明細書は日本特有の表現で書かれており世界へ伝えることは難しい状態にあると考えています。
2)では、世界へ伝えることが難しい日本の特許明細書は、いったい誰の指導で書かれるようになったのでしょうか?知財関係者は先人達の教えを守り、それぞれの立場で一生懸命、真面目にやってきた自負があります。その場その場で最善をつくしてきた結果が、たまたまグローバル化に対応できない特許明細書になっていたということで誰の責任でもなさそうです。「早く 改善しろ、なぜ放置する!」と急に言われても、 知財関係者の皆さんは、それぞれの持ち場で最善を尽くしてやってきたわけですから、反発する人、怒る人がいても当然かと思います。
3)何故、グローバル化に対応できない特許明細書になったのでしょうか?恐らくは審査官と申請者側の二者間でのやり取り(妥協点を探る)において特許を取りたいという願望が、時には「コジ付け」となり、その「コジ付け」の技が武器にもなり書き手の評価にも繋がったと思います。日本語は極めて柔軟性のある言語であるため、解釈範囲を広く表現することも、同じ意味でも違う表現を使うこともでき、行間から意味を読み取ることが読み手の能力とされた部分もあります。曖昧で解釈範囲の広い日本語は特許業界で独特の進化を続け、気が付いたら日本の特許明細書は「ガラパコス化」していたということではないでしょうか。
4)読み手側の混乱を招く曖昧な特許明細書は、中小企業の海外進出、すなわち中小企業のグローバル化の妨げとなります。“特許の力”で世界からパートナーを求めようとする「共生(共創)」の目的が果たせなくなります。もちろん特許係争、模倣品対策においても「戦う」ことができず、問題を解決する力がありません。曖昧な特許明細書は多方面に膨大な経済損失を招くだけでなく、現場の開発技術者にとって、“なんでこんな技術が特許になるの、これでは新商品の開発ができない!”ということになり産業発展の妨げにもなるのではないでしょうか。
5)さらに特許明細書は技術文書の中でも法的文章と技術文章が入り混じった特殊な文書であるから専門家以外は口を出せないという風潮もあったと考えます。「日本特許村言語」と言われても仕方がない極めて特種な言語表現は、海外へ特許出願する際に翻訳が困難であるという大きな問題を抱えることになり、このままでは「マズイ」のでは、あるいは「おかしい」という認識を多くの知財関係者は持っています。しかし、これまでの流れに逆らうこと、つまり“回りがやっているから、これまでやってきたから、自分(自社)だけが変わることに対するリスクが怖い”というのが本音です。
6)一方では、どこをどのように改善すべきが分からないという話しも聞きます。つまり具体的な改善方法が見つからないから改善が進まないということです。このままでは“世界で通用する特許明細書”ヘの改善は中々、進みません。中でも大企業の多くは、過去の柵(しがらみ)を抱えており改善は難しいそうです。
7)ご承知のように特許明細書の作成は、専門家といわれている書き手(作者)のアナログ技術であり、書き手の能力によって特許明細書の品質にバラツキが出るのは当然かと思います。さらに書き手が持つ技術背景、新しい技術に対する理解力と好奇心、発明を論理的に説明する説明力、技術のバリエーションを増やす発想力、文書を整える文章力などが大きく影響します。
8)欧米の特許文書は“論理的に展開されており、読み手側に理解をしてもらうことを目的とした文章構造になっている”この大原則が守られているならば、特許文書、特にクレーム部分の文章はマニュアル化することが可能であると考え続けてきました。改善を促すには、やはり目に見える分かりやすい改善策を提供することが一番の早道のようです。
9)当協会は“伝わる日本語、訳せる日本語”をキーワードに掲げ“世界で通用する特許明細書つくり”の啓蒙活動を続けています。当協会の生みの親は日本アイアール社知的財産活用研究所です。当研究所は、特許明細書作成のマニュアル化に興味を持ち、そのデジタル技術(手法)を知財関係者が共有することで、特許明細書の生産効率と品質を高めることが可能と考えました。また発明者は専門家が書いた自分の発明技術をチエックすることも可能になります。もちろん他言語への翻訳ミスも少なくなります。その成果の一つが、「構造化された発明仕様書(提案書、届書)の作り方」です。そして強力な援軍に出会いました。それが「構造化クレーム」の図式化です。
◆「構造化された発明仕様書(提案書、届書)のマニュアルはこちらから
◆「構造化クレーム」の図式化のマニュアルはこちらから
10)「構造化クレーム」は日本特許情報機構(JAPIO)特許情報研究所の「特許版・産業日本語」の活動から生まれた成果物です。当協会は「特許版・産業日本語委員」の横井俊夫氏の主導で「構造化クレームを用いた請求項文の作成と翻訳」のマニュアル作成を進めています。
11)クレームを図式化することで、クレームの「あるべき姿」が捉えられます。 クレームの「あるべき姿」が頭の中で整理されていますと、発明者が作成する発明仕様書は、どのように作り込んでいくべきかが明確となります。「あるべき姿」を追い続けることで、発明者の「創造力と論理力」も鍛えられていきます。当協会は創造技法ツール(MEMODAS)を使ってバリエーション豊かな発明仕様書を作るナビゲーションを用意しています。当協会の「知財経営塾」は、このナビゲーションを使って分かりやすい実習(演習)を重視した教育を目指しています。
12)中小企業は「しがらみ」がありませんので改善意欲さえあれば、改善が進むものと希望を持っています。改善意欲のある企業、改善が進めやすい企業から確実に進め効果を出していけば後から続く企業も出てくると考えています。大企業でも改善できる立場の人から改善を進めればよいと思います。改善に取り組まない企業は、いずれ淘汰されることは間違いありません。